頭の中に種をまく

その時々に読んだもの、見たもの、聞いたものについて考え、紹介します。

先進国の文化人類学的研究 - ドイツ映画『はじめてのおもてなし』

お題「最近見た映画」

 

はじめてのおもてなし』というドイツ映画を見ました。原題は『Willkommen bei den Hartmanns』、ハートマン家へようこそということなのですが、現代ドイツのやや上流くらいの家族が、ナイジェリアからの難民の青年を家に受け入れたことから、再び家族としてのつながりを取り戻す、という話です。

 

ジャンルとしてはコメディなのでしょうが、そこで期待されている笑いは、単純なものではありません。私が面白く思ったのは、難民の青年が、一種の文化人類学者であるかのように、ナイジェリアとは全く異質のドイツという国とその民族性を発見していくところです。

 

先進国ドイツには、先進国であるがゆえとも言える奇妙な事象が多々あり、その奇妙さが指摘され再発見されることで笑いがもたらされます。これは、表層的には滑稽な笑いですが、本質的には自身の文化を相対化し戯画化する、シニカルな笑いでもあります。紛争を逃れてやってきた平和の国ドイツで、しかし家族が崩壊の危機に貧しているのを目の当たりにするのは、悲しいことでしょう。

 

これはドイツに限ったことではありません。日本を幸福の国だと信じて訪れた人は、現実の日本を見て、何を思うでしょうか。