頭の中に種をまく

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塵が積もって本当に山になるか? - 暗記の目標を達成するための計画づくり

語彙の大きさは、外国語ができるようになったと言える目安のもっとも分かりやすいものだと思います。たとえば1000語とか、4000語とかといった数の単語を学習し、記憶したら一段落とするといった具合に、目標としても設定しやすいです。

 

ところで、たとえば4000単語を目標としたときに、1日10単語ずつ覚えれば、400日、一年強で達成できることになるような気がします。しかし、この考え方は、「人は忘れるものだ」ということを忘れてしまっています。毎日10単語覚えても、それまでに記憶した単語の一部を忘れてしまうのでは、400日経っても4000語を覚えることはできません。自分がどのくらい忘れてしまうのかを前もって知ることはできませんが、忘れることを前提とした計画を立てることが目標達成には重要ではないかと思います。

 

それでは、どのように計画を立てればいいでしょうか。「毎日一定数の単語を暗記し」、「毎日一定の割合で語彙の一部を忘れてしまう」とすると、語彙の大きさの変化は以下のような微分方程式で表されることになります。

 

dy / dx = r - p * y

 

ここで、yは語彙数、xは時間(ここではとくに日数)、rは一日あたりに暗記する単語数、pは一日あたりに忘れてしまう単語の割合、です。語彙数の変化は、一日に覚える単語の数から、忘れてしまう単語の数を引いたもの、ということです。

 

これをyについて解くと、以下のようになります。

 

y = (1 - e^(- p * x)) * r / p

 

e^(- p * x)はxが大きくなると0に近づきますので、xが大きくなるとyはr / pに近づきますが、これより大きくなることはできません。

 

さて、pの値は人によってもチャレンジしようとする言語によっても変わってくるでしょうが、ここでは、0.001、つまり1000分の1としてみます。毎日、1000単語のうち1つを忘れてしまうわけです。このペースで忘れていった場合、1年語には

 

(1 - 0.001)^365 = 0.694...

 

となり、はじめの7割弱にまで語彙が減ることになります。私自身の感覚としてはもう少し忘れているような気もしますが、そんなに実感とかけ離れているわけでもないので、とりあえずここではこの数字を使ってみます。

 

次に、語彙数の目標を設定してみます。ここでは、とりあえず4000としておきます。とくに根拠があるわけでもありませんが、よく外国語学習の一つの目安とされる数字だからです。このくらいの語彙があれば、少なくとも英語なら、旅行に行って困ることは(発音等の問題は別として)あまりないと思います。

 

この条件のもと、1日10単語ずつ覚えるとします(r=10)。まったく忘れないのであれば400日目に4000語を達成することになりますが、毎日0.1%ずつ忘れてしまうので、400日目の語彙は3297語となります。4000語に到達するのは、511日目のことです。約1年半で上がりとなるわけです。

 

ちなみに、いまの条件では覚えられる最大の語数は10 / 0.001 = 10000と、10000語となりますが、これを達成するのは、Excelで大雑把に計算すると、9904日目のようです(実際には、語彙数の小数点以下をどのように処理するかで変わってきます)。

 

それでは、p = 0.001のままで、一日に覚える単語の数を変化させて、4000語に到達するのが何日目か、計算してみましょう。

 

r = 20: 224日目
r = 30: 144日目
r = 40: 106日目
r = 50: 84日目

 

しかし、実際には毎日こうしたペースで単語を覚え続けるのは至難の業です。よほど根性のある人でない限り、1日5単語くらいが持続できる水準ではないでしょうか。この場合は、4000語到達は1610日目、約4.4年後となります。なかなか気の長い目標です。

 

「1日に0.1%ずつ忘れる」という前提のもとですが、記憶を蓄積するには、上記のように時間がかかります。ものごとには、自分が忘れるということを忘れずに取り組みたいものです。