頭の中に種をまく

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リーダーは部下と理念に奉仕する - 書評: 池田守男、金井壽宏『サーバントリーダーシップ入門』

池田守男、金井壽宏の『サーバントリーダーシップ入門』を読みました。


リーダーシップ関連の最近の書籍を読んでみて分かるのは、命令し、周囲の人々を自分が思うように動かして成果を出すタイプのリーダーは、すでに過去の像だということです。組織が社会の変化に対して柔軟に姿を変えていかねばならない時代には、個々人の多様性と能力が最大限に発揮されねばなりません。そのためには、構成員一人ひとりが自ら考え行動するようになることが必要です。


反対に、こうした状態が実現できていれば、リーダーが箸の上げ下げまで指図する必要はありません。むしろ、構成員の能力を開花させる手伝いをすることこそ、よい組織をつくるためのリーダーの役割となります。


これが、サーバント・リーダー、奉仕する者としてのリーダーです。その奉仕の対象は部下や従業員ですが、これはその先に、自分自身の理念の実現という目標があるからこそできることであり、さらに、その理念が構成員にとっても目標として共有されているからこそ、リーダーがリーダーとして認められるのです。「リーダーは部下に認められることによってなるものだ」というこの考え方は、なるほどと膝を打ちたくなるものでした。


この本には、こうした理論面と同時に、資生堂の改革においての池田守男氏の実践が紹介されています。サーバントリーダーシップの捉え方には池田氏と金井氏の間にも微妙な差があり、そのぶん理解がやや難しくなっていますが、それはどう解釈するかを自ら考えるためのきっかけとなるとも言えましょう。何より、経営者がどのように実践できるかという観点は大変勉強になりました。


 

 

サーバント・リーダーシップ入門

サーバント・リーダーシップ入門