頭の中に種をまく

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生き方の表現としての場所 - 書評: 三浦展『100万円で家を買い、週3日働く』

三浦展の『100万円で家を買い、週3日働く』を読みました。


4章から構成されていますが、とくに第1章を大変興味深く読みました。そこでは、7人の実験的な生き方が描かれています。離島に移り住んで、古い家屋をリノベーションしながら町に活気を与える女性。広い農地付きの物件を買って、子どもに自然とのふれあいの場を提供するNPOを運営する夫婦。地域住民の憩いと体験の場としてのランドリーカフェをつくった女性。どのエピソード中の人物も、自分の意志に素直であり、しかもその意志は人を動かし惹きつける力をもっていました。


私は、こうした人たちの生き方を羨ましく思います。いずれのエピソードにも共通しているのは、人とのつながりを実現する場所を作り上げたということ。家、あるいは住処は、自分が帰属する場所であって、自分自身をよくよく表すものです。そうした場所が人びとの共感を呼び、人と人とをつなげる場となるのであれば、これに勝る幸せはなかなかないでしょう。


家というものを、単に寝泊まりする場所としてではなく、自分の生き方を示す場所として捉えること。あるいは、もっと広く、自分に関係するあらゆるものを、自分の生き方の表現と捉えること。そうすることで、日常の中にも、生活をより豊かなものとするための多くの工夫の余地が見つかるような気がしてきます。

 

 

100万円で家を買い、週3日働く (光文社新書)

100万円で家を買い、週3日働く (光文社新書)