頭の中に種をまく

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想像力の源泉としての神話 - 書評: 後藤明『世界神話学入門』

後藤明の『世界神話学入門』を読みました。
 
世界の神話はゴンドワナ型神話群とローラシア型神話群という二つの系統に大別され、とくにローラシア型神話群にはプロットに一定の法則性が観察されるという、大変にスケールの大きな仮説が紹介されています。プロップの『魔法物語の研究』を神話に適用したような議論で、私は大学のときに中世文学のあるジャンルの作品群を同様の手法で分析したことがあったので、大変興味深く読みました。
 
私自身は、特定の神話が一つの地点から大陸を超える規模に拡散するということがあり得ると思いますが、直感的には人間の認知のあり方とか、自然環境の類似といった要素によって似た物語が生成されることの方がもっともらしいと感じるので、どういうプロセスで神話が伝播されたかという考証的な議論はあまり深く立ち入る必要がないと感じました。
 
その一方で、世界のさまざまな神話のエッセンスがふんだんに紹介されていることは、想像力を掻き立て、それぞれの神話をもっと深く知りたいと思わせるものでした。とくに、ゴンドワナ型神話群に分類されている神話は、通常の論理とか発想とは領域を異にするもののようで、大変興味をそそられました。
 
神話に限らず、昔話・童話といったジャンルに興味をお持ちであれば、きっと楽しめる一冊であると思います。
 

 

世界神話学入門 (講談社現代新書)

世界神話学入門 (講談社現代新書)