頭の中に種をまく

その時々に読んだもの、見たもの、聞いたものについて考え、紹介します。

台湾の歴史を手軽にしかし真剣に学ぶために - 書評: 胎中千鶴『あなたとともに知る台湾』

胎中千鶴の『あなたとともに知る台湾』を読みました。


少し時間は経ちましたが、この連休中に台湾に行きました。観光のためだけに海外に出かけるのは随分久しぶりのことでした。


せっかく台湾に行くのだからといくつか歴史関係の本を読んでみたのですが、この一冊はその中でも最も分かりやすく書かれていたものでした。語り口は軽妙なのですが、日本による侵略の時代から、中国復帰、そして中華民国としての曖昧な立ち位置に至る沈鬱な歴史を、正面からとらえて描いています。読みやすさと内容の真剣さとのバランスが、非常によくとれていると感じました。とりわけ、228事件の顛末については大変分かりやすく印象的に書かれており、台湾の歴史における位置づけがよくわかりました。その印象が大変強かったので旅行中に228記念館を訪問してみたのですが、広島の平和祈念公園と同様、戦争と平和というものについて考えさせられる、行ってよかったと思える場所でした。


台湾は海外旅行の目的地として日本人に大変人気のあるところですが、あまり歴史について学んでから行くという人はいないのではないかと思います。この薄い一冊を読むだけでも非常に勉強になるので、台湾に行く前に、是非読んでみてはいかがでしょうか。