意思決定論の数学的背景を知りたいなら - 書評: 木下栄蔵『わかりやすい意思決定論入門』
木下栄蔵の『わかりやすい意思決定論入門』を読みました。
私はもともと多少はオペレーションズ・リサーチを勉強していたのですが、それでもこの本は「わかりやすい」とは言えませんでした。いろいろなツールが紹介されているものの、そのツールがどのようなものかということを説明する前に細かな数学的説明が始まり、しかも各変数の意味も順を追って詳しく説明されるわけではないので、初学者が読んでも全く意味がわからないと思います。
たとえば私はAHPをときどき実際に使用するので、AHPについての章は理解できました。しかし、何も知らない状態でこの本を読んで何かを得られたかというと、得られなかっただろうと思います。AHPの場合は、まず実際の表がどのようなフォーマットで、そこにどのような数字を入れて、そしてどのように結果が出るということを実際に見せるほうがよほど効率がよいと思いますし、そうせずに各プロセスの話を始めても、一体それがどのようなもので、なんのためにやっているのか、見当がつかないでしょう。残念ながらこの本は、ツールが使えるようになることを主眼としてはいないようです。
もともと知識をもっている人がより詳細な数学的背景を知るために読むのであればよいでしょう。そうでなければ、もっと実用的な参考書を先に読むべきです。
ORの基本図書としては、以下のものがおすすめです。このシリーズのものはどれもそうですが、根本の部分をたいへんわかりやすく説明してくれています。