頭の中に種をまく

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変化をもたらすために自身を変えられるか? - 書評: 伊神満『「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明』

伊神満の『「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明』を読みました。話題になっている本だけあって、なるほど語り口が軽妙で、分かり易く説明がなされていました。

 

イノベーションにおいては、

 

1. 新しいものをつくっても自社の既存の製品との共喰いをしてしまうため、既存企業はイノベーションに積極的になれない

2. その一方で、既存企業はすでにもっている権益を手放したくはないため、イノベーションにおいて新興企業に敗れたくはない

3. 既存企業は組織の点でも設備の点でも新興企業より高い能力をもっている

 

という力学が働き、これらのバランスによって既存企業が有利か新興企業が有利かが決まるが、この中でも共喰いを忌避する傾向が非常に強いため結局は既存企業が敗れてしまう、ということが論じられています。

 

とは言っても、この本にはその具体的な分析プロセスは描かれていません。あくまで一般向けの啓蒙書であって、数式によって説明するという経済学の教科書ではありません。この点、私は少々物足りなく感じました。

 

それでも、経済学的な分析の枠組みや、それをするための心構えといったものが丁寧に紹介されていることは、大変参考になりました。これらは、激動の時代においてどのように振舞うべきかということを考える上で有効な示唆を与えてくれるように思います。

 

 

「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明

「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明