頭の中に種をまく

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一人ひとりがリーダーだと自覚する組織の強さ - 書評: 伊賀泰代『採用基準』

伊賀泰代の『採用基準』を読みました。仕事をする上でもっとリーダーシップについて学ぶ必要があると考え、ネットでよい参考書がないかと検索して見つけた本です。タイトルだけでは全くリーダーシップの本だとは思えないので、もし書店で探しただけであれば、決して見つけられなかったでしょう。書店にも、リーダーシップの棚ではなく、採用の棚にありました。タイトルで損をしてしまっているように思えてなりません。

 

さて、その中身ですが、大変勉強になりました。働き方、仕事に対する意識に大きなインパクトを与えるもので、読んでよかったですし、もっと早くに出会っていればと思いました。これから社会に出る人にも、すでに社会に出て働いている人にも、ぜひ読んでもらいたい一冊です。

 

最大の学びは、たとえ肩書がリーダーでなくても、成果が求められる場面ではリーダーシップが必要だということです。この考え方は、リーダーシップというものの理解を大きく変えさせてくれるものでした。リーダーシップは人を率いることですが、それは責任を引き受けて、自分で考え、自分で行動することです。これによって、人は自分一人で達成できないことも達成できるようになる。

 

その一方で、リーダーシップはチームの成員にも求められます。トップにリーダーシップがあっても、成員がチームの課題を自分事として受け取らなければ、チームは課題解決のための力を発揮できません。たとえ自分に部下がいなくとも、目の前にある状況を何とかしてよくしようと考え他人に働きかけていく。そうしたメンタリティも、リーダーシップだと言えるでしょう。

 

そうして著者は、日本人にこうしたメンタリティが欠けていることを問題視しています。組織を、ひいては社会をよりよくしていくためには、行動が必要です。その責任を個々の成員が負おうとする集団は、とても力強く、魅力的に思います。

 

 

採用基準

採用基準

 

 

同じ著者による『生産性』もお勧めです。日本の企業に欠けているのはリーダーシップと生産性だというのが著者の持論で、『採用基準』で前者を、『生産性』で後者を論じています。近いうちに、こちらも紹介するつもりです。

 

 

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの