頭の中に種をまく

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日本で生きていきにくいと感じたら - 書評: 中島義道『非社交的社交性』

中島義道の『非社交的社交性』を読みました。


後半は著者の主催する哲学塾において、他者の考えや「常識」が分からないために参加者たちが引き起こす珍事件の紹介にあてられており、前半は著者自身の現代社会における生きにくさ(と強かさ)が描かれています。哲学に魅せられる人の生態を明らかにすることを基調としつつも、テーマは多岐にわたり、中にはどうして一緒に収録されているのか分かりかねる部分もありました。しかし、そうした部分も含めて、哲学をするということが(少なくとも著者のような人にとって)どういうことなのか、アイロニカルでしかも切実な思いが綴られて、心揺さぶられるものでした。


たとえば息子がウィーンの日本人学校で体験した理不尽な精神的束縛や、インターナショナルスクールで得た自由についてのエピソードは、日本で生きることが大変な苦痛を伴う人のあり方として大変鮮烈なものでしたし、私自身も多分に共感するところでした。


教師としても反面教師としても、生き方に迷ったときに手を伸ばしたくなる一冊でした。

 

 

 

非社交的社交性