頭の中に種をまく

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志向性は情報の受け手がいてはじめて生じる - 書評: 戸田山和久『哲学入門』

戸田山和久『哲学入門』第4章について。この章のテーマは表象で、とくに、表象が何かについて志向することができるという、志向性について議論されます。生きものが(第3章で論じられたように)自然の中に流れるものとしての情報を取捨選択し、独特の仕方で利用することにより、志向性が生じうると説明しています。

 

これは第3章で生じた私の疑問に答えるものでした。それは、条件付き確率を1とする情報(自然的情報)はそれほど多くはないし、それほど確率が高くはない情報も生物の生存に役立ちうるのだから考慮すべきではないのか、という疑問でした。この後者の疑問については、そういった情報も生物にとって有用であり、利用されるという風に議論が進んでおり、完全に解消されました。一方の前者の疑問、条件付き確率を1とする情報が本当に多数存在するのか(あるいは、どのように条件付き確率が1であることを判定できるのか)ということについては、疑問のままではありますが、そもそも自然的情報というものが生物にとってあまり役立たないため考慮の対象から外れたため、また別の文脈で考えなければならないようです。

 

志向性の発生を消費者による利用と結び付けて論じるという点で、本章の議論は直観にもかなうものでした。ただし、議論の流れがよく理解できない、あるいは納得できない部分もあり、消化しきれていない思いです。また何度か読んで、理解を深めていかねばなりません。

 

 

哲学入門 (ちくま新書)

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