頭の中に種をまく

その時々に読んだもの、見たもの、聞いたものについて考え、紹介します。

変化は受け入れるものではなく生み出すもの - 書評: ピョートル・フェリークス・グジバチ『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか』

モルガンスタンレーおよびグーグル出身の著者による啓発本です。こういう本はいろいろな読み方ができると思います。新しい情報を得るためのリソースとして、具体的な問題に取り組むための手引きとして、不案内な分野で何が話題となっているのかを知るため……

 

私はこの本を、一種の自伝として読みました。もちろん、どういうふうに生産性を高めるかとか、どんな新しいサービスがあるかといった、実際的なことも多々盛り込まれています。しかし、この本の最も強いメッセージは、変化することを恐れてはならない、というものだと思いました。

 

著者は1975年にポーランドに生まれ、民主化・資本主義化を経験します。この変化のなかで、「自分自身が変わらなければ」と強く思います。

 

環境の変化に飲み込まれないようにするためには、自分が変わらなければなりません。自分を簡単に変えられる人はなかなかいないので、変化のためにはリスクをとるのだという思い切りが必要です。この本で紹介されている様々の知恵は、著者がそれらの知恵をどのような思い切りでもって実行に移してきたかという記録でもあります(もっとも、著者自身はそれらが思い切りでも何でもなく、むしろそうしないことがリスクだと考えているのでしょうが)。

 

この本に書かれていることは、著者の経験に裏打ちされているという点でオリジナルなものではありますが、どこか別のところで違った仕方で学べないという類のものでもないでしょう。しかし、それが著者の強烈な実体験に根ざす信念によって彩られているために、より切実に向き合わねばならないものだと思わせる力をもっています。これから自分をどう変えていくべきかということを考える上で、たいへん意義深く思える一冊でした。