頭の中に種をまく

その時々に読んだもの、見たもの、聞いたものについて考え、紹介します。

北極星という指針を見つけられること

私は星のことには詳しくないのですが、基本的な星座の形くらいは分かります。ただ、形はわかっても、それが空のどの方角にあるのかということは分かりません。なので、たとえば小熊座はどちらの方角に見えるかといった質問を受けても、分からないと答えるしかありません。

 

しかし、夜中に家路についていると、ふと、オリオンが見えることに気づきました。これは数ある星座の中でも最も見つけやすいものではないかと思います。それでも、星座を見つけたというので少し嬉しくなって、あたりをぐるりと見回してみると、北斗七星がありました。そこから目を少し転じると、カシオペアもありました。

 

さて、北斗七星やカシオペアから北極星を見つけられるということを、ずいぶん昔に聞いたことがありました。北斗七星を基準にあたりをつけてみると、確かに明るい星があることに気づきました。カシオペアを出発点にしてみても、同じ明るい星にたどり着きました。自分で北極星を見つけたのは、はじめてのことでした。

 

北極星を見つけるというのは、遠い過去においては人間が生きていく上での基本的なスキルの一つだったかもしれません。それは、スキルと言うにはあまりに簡単なものですが…

 

今では、北極星を目印にすることが必要になる場面など、まずありません。もっと別の様々の手段で、たどり着くべき地点にたどり着くことができます。

 

それでも、北極星を見つけたとき、少しの、奇妙な安心感を覚えました。あの星を目印とすれば、帰るべきところに帰れるという安心感に近いものでした。

 

以来、夜道を歩くときには、自然に北極星を探すようになりました。生きるための基本的なスキルをもっておくということは、それがたとえ現代にはほとんど意味をなさないものであっても、拠り所を作るという意味では有意義なものに思います。