頭の中に種をまく

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政治とは何のためのものか? - 書評: 橋爪大三郎『政治の哲学』

議会の議席数とか、日本にどんな政党があるかといったことは、学校の政治経済でも教わりますし、社会に出れば教養として知っておくべきこととみなされます。しかし、なぜ議会というものが生じたのか、なぜ政党というものが生じたのかという質問に対しては、明確な答えを提供できる人は少ないのではないでしょうか。


橋爪大三郎の『政治の哲学』は、こうした政治にまつわるものごとを、日常的に目にするより一段深い階層から論じています。いわゆる、「いまさら聞けない」ような基本的なことから、「そもそも聞いたことがない」ような本質的な理解まで、政治というものを理解するための土台を提供してくれます。


難易度は決して高くありません。前書きにも書いてありますが、中学生でも十分理解できるよう、きわめて平易な表現と論理構成とで議論が進められています。


私がとくに印象深く思ったのは、憲法についての議論です。


憲法の制定は、社会契約説を、ただの学説にとどめず、それに沿って本当に政府を樹立してしまう、具体化の試みだと言えます。


憲法と社会契約説を結びつけて考えたことはありませんでしたが、言われてみれば、なるほどそうだと思います。憲法というものをつくることによって、こういう条件であれば私の権利を一部制限してでも社会のルールに従いますよと約束をする。その条件こそ憲法であると考えると、確かに、憲法は社会契約を具現化したものです。


こうした知見を学ぶことのできる、大変有益な一冊でした。

 

 

政治の哲学 (ちくま新書)

政治の哲学 (ちくま新書)