頭の中に種をまく

その時々に読んだもの、見たもの、聞いたものについて考え、紹介します。

無限等比級数を計算してはみたものの

私は数学が好きで、社会人になってからもときどき勉強しています。得意というわけではないので、専門的な本には立ち向かっていけないのですが、とくに統計のような実践的な分野については、大抵のことはとくに問題なく応用できるつもりでいます。

 

さて、最近、仕事をする上で、無限等比級数の計算をしました。私の普段の仕事では全然ないのですが、ひょんなことから、ある設備を導入することが利益となるかどうかを検討するよう依頼されました。そこで素人なりにいろいろと分析して、導入しない場合の機会損失を具体的な数字として求めてみました。そこで無限等比級数の計算が出てきたわけです。

 

ファイナンスなどを担っている人であれば日常的に接する計算なのでしょうが(しかしもしかしたら、そういう人ほど等比級数として計算するのではなく公式に当てはめているだけ――あるいは、もっとありそうなこととしては、単にコンピュータに数字を打ち込むだけなのかもしれませんが)、私の普段の仕事ではそんな場面はまずありません。それでも、一歩ずつ丁寧に計算を進めて、とくに引っかかることもなく無事に答えを求められました。

 

ところが、問題はそれを説明するときに起こりました。その結果を見せた相手が、無限等比級数というものを知らなかった、あるいは、すっかり忘れていたのです。さすがに、理屈を説明しているほどの時間の余裕はありません。

 

数学に限らず、考えるためのツールが共有できていないために互いに理解し合えないということは、しばしば起こることです。高校で習うことくらいは前提としてもよいのではないかと思う一方で、めったに使わないものであれば習得する必要はないという議論も強力です。

 

社会として、組織として、構成員にどのくらいの水準を求めるかということは、メリットとデメリットとをよく比較した上で決断されねばならない難しい問題です。ただ、私個人としては、単にできなかったことができるようになるという楽しみのためだけでも、より高い水準に至れればよいと願います。