頭の中に種をまく

その時々に読んだもの、見たもの、聞いたものについて考え、紹介します。

書評

情報の定義とは何か? - 書評: 戸田山和久『哲学入門』

戸田山和久『哲学入門』の第3章について。この章は、情報がテーマでした。 シャノンは、通信の理論をやりたかったから、もちろん、情報源が次々と記号を生み出していくという事象だけを念頭に置いていた。しかし、もともとは情報源に対して定義されていたエ…

言葉を定義する目的は - 書評: 戸田山和久『哲学入門』

戸田山和久『哲学入門』の第2章について。この章のテーマは「機能」で、第1章で紹介されたミリカンの本来の機能を題材として、哲学の仕事は何かという大きな問いを扱っています。 わたしが面白いと感じたのは、概念分析でない、理論的定義による概念は、同…

機能はいつから機能になるのか? - 書評: 戸田山和久『哲学入門』 (2)

戸田山和久『哲学入門』の第1章について。この章の題は「意味」で、これをいかに唯物論的な世界に位置づけるかということを巡って論が進みます。 話しの中心はミリカンの「目的論的意味論」で、これももちろん非常にスリリングであったのですが、私にとって…

書評: 戸田山和久『哲学入門』 (1)

戸田山和久の『哲学入門』を読み始めました。この本は以前にも読んだことがあるのですが、内容を復習し、よりよく理解したいと思ったので、読み返すことにしました。 タイトルこそ哲学入門ですが、より正確には、現代哲学の入門書です。過去の哲学者は――プラ…

西洋美術史をマーケティングする - 書評: 木村泰司『世界のビジネスエリートが身につける教養西洋美術史』

少し前に話題になっていた、木村泰司の『世界のビジネスエリートが身につける教養西洋美術史』を読みました。西洋美術史の本はずいぶん前にではありましたが何冊かすでに読んだことがあったので、半ば復習のようなつもりだったのですが、聞いたことがないと…

医学の初歩の初歩を学んだ気分になる - 書評: 茨木保『人体の不思議』

書店でたまたま見かけて興味をもち、茨木保の『人体の不思議』を読んでみました。医学系の簡単な入門書に目を通してみたいという思いだけはずいぶん前からもっていたものの、他の興味の前になかなか具体的な行動に起こさずにいました。そうした中で、この本…

企業が理念を掲げる意味 - 書評: 山口周『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』

哲学と美術史学との素養のあるコンサルタントによる、なぜ経営に美意識が必要かということを論じた本です。議論は非常に明解で、議論の一部を要約すると以下のようになるかと思います。 経営には、クラフト、サイエンス、アートの三つの要素が関わります。ク…

変化は受け入れるものではなく生み出すもの - 書評: ピョートル・フェリークス・グジバチ『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか』

モルガンスタンレーおよびグーグル出身の著者による啓発本です。こういう本はいろいろな読み方ができると思います。新しい情報を得るためのリソースとして、具体的な問題に取り組むための手引きとして、不案内な分野で何が話題となっているのかを知るため…… …

なぜ経営の力が求められているのか - 書評: 三枝匡『経営パワーの危機』

『戦略プロフェッショナル』に引き続き、三枝匡の『経営パワーの危機』を読みました。『戦略プロフェッショナル』が、そのタイトルの示す通りに企業の戦略のありかたを中心に論じているのに対し、『経営パワーの危機』は人の上に立って判断をする能力をいか…

生きた経営戦略を学ぶ - 書評: 三枝匡『戦略プロフェッショナル』

人に勧められて読みました。経営のあり方を小説のような形式で書いたもので、理論ばかりでどのように現実に立ち向かえばよいのか結局わからない、という経営書にありがちな弱点が巧みに回避されています。厚みはそれなりにありますが、ストーリーがあるので…