頭の中に種をまく

その時々に読んだもの、見たもの、聞いたものについて考え、紹介します。

ナイフとロープ ― 非常時のために何を用意するべきか

最近の日本各地を襲っている大雨の被害は凄まじいもので、私自身が住んでいる地域は平気であるものの、被害を受けている地域の親族や友人は大丈夫かと心配な日々が続いています。さらに、やや強い地震も頻発しており、いつかまた2011年のような事態が起こるのではないかという一抹の不安もあります。

 

我が家でも、万一のための備えを考えています。もともといくらかの準備はありましたし、新たにいくらか揃えたものもあります。本当に避難することが必要になったら、あまり多くのものをもっていくことはできません。最低限のものを見極める必要があります。しかし、これがなかなか難しい。

 

登山では、「要るか要らないか迷うものはもっていくべきでない」と言われます。これはなるほど一理ありますが、しかし災害という状況に対して有効かと問われると、有効だと言い切ることは難しいと思います。登山は経験を積むことで何が必要で何が不要かということに関する直感を鍛えることができますが、災害は自ら進んで経験することができないからです。経験ができなければ、どんなものが必要でどんなものが不要かということを、実感として理解することが困難です。

 

私も、災害のために何を揃えておくか、伝聞で学んだ限りでしか考えられず、いま準備しているもので十分かということを完全には信じられずにいます。それでも、何かしら準備している方が、何もしないよりはよいでしょう。

 

差し当たり、私が必要なものを選ぶ基準は、「代替不可能であること」と、「メタな道具であること」です。

 

例えば水や食料(あるいはそれらを確保するための手段)は、人間にとっての唯一の栄養源ですから、他のもので置き換えることができません。

 

道具として重要なのは、メタな道具であること、つまり汎用性が高く、他の道具を作ることのできるであることかと考えています。その典型例と私が思うのが、表題に掲げた、ナイフとロープです。これらがあれば、様々な道具を自ら作ることができます。

 

そしてこの原則は、災害対策に限らず、日常の課題に取り組む上でも有効なものであると思います。瑣末な問題に拘らず、広範な問題に応用できる道具を見極め、それをもっておくこと。そして、それを使いこなす技術を習得すること。これを念頭に置いて、自分がより納得できる用意を整えたいと思います。